皆さんは、バクテリアって言われて何を思い浮かべますか?普段生活していてバクテリアのことを真剣に考えることなんて殆ど無いかもしれませんが、金魚の飼育やアクアリウムをやろうという人にはバクテリアというものを知ることは基本といっていいぐらい大事なことですよね。知らない人は、ぜひ、この機会にアクアリウムにおけるバクテリアとはなんなのかということを知っておいてください。
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金魚の水槽におけるバクテリアの役割とは?
金魚を飼育しているうちに、いろいろ覚えてくると早いうちにバクテリアが金魚の飼育には重要という話を聞くことになると思います。それでは金魚の飼育になぜバクテリアが関係してくるのか考えてみましょう。
金魚の飼育にはどういったバクテリアが必要?
まずは、金魚の飼育に重要な(金魚に限りませんが)好気性バクテリア、嫌気性バクテリアについて知っておきましょう。
金魚の飼育に重要な好気性バクテリアとは?
金魚のバクテリアを知っていくうちに好気性バクテリアという言葉がでてきます。まずはこの好気性バクテリアとは何なのかというのを簡単に説明してみます。好気性バクテリアを簡単に言うと金魚を飼育している(金魚じゃなくほかの観賞魚でも自然でも役割は同じだと思いますが)時に使用するスポンジや底砂、濾過フィルターなどに棲みつき水を綺麗にしてくれるバクテリアのことです。
例えば魚や生体が糞などの排泄物をした時、水槽内にはアンモニアが発生することになります。水中に排出されたアンモニアは毒素が非常に高く、アンモニア濃度が高くなればアンモニア中毒になり魚(生体)は生きてはいけません。そのアンモニアを分解してくれる働きをするのが好気性バクテリアです。
好気性バクテリアがアンモニアを分解することにより、分解されたアンモニアは亜硝酸へと変化します。
そしてそのアンモニアから分解された亜硝酸にも毒素はあるのですが、その亜硝酸も好気性バクテリアにより魚にや生体に比較的、害の少ない硝酸塩へと分解されます。
これだけで好気性バクテリアがどれだけ重要な存在かわかっていただけたかと思います。
新しく金魚の飼育水を作る際、エアレーションを数日から回ししておいた水を使用したほうがいい言われるのは、底砂や空気中など自然に存在している酸素が多い場所を好む好気性バクテリアを飼育水、飼育水槽の中にあらかじめ増やしておこうという狙いがあるからなんです。
それでは、次は嫌気性バクテリアについて簡単に説明してみます。
嫌気性バクテリアをとは?
先ほどは好気性バクテリアについて説明しましたが、嫌気性バクテリアが行う働きは少し違います。好気性バクテリアがアンモニアを亜硝酸→硝酸塩に分解してくれるということを先ほど書きましたが、嫌気性バクテリアはその硝酸塩を窒素に変え、空気中に放出するという働きをしてくれるバクテリアなんです。
ならば好気性バクテリアと嫌気性バクテリアが繁殖すれば水質をずーっと安定させるのも簡単そうな気がしますよね。でも実際は(実際に絶妙なバランスが保てればほとんど濾過器無しの足し水だけでOKになるようです)そううまくはいかないことがほとんどです。
なんでそれが簡単じゃないかというと好気性バクテリアと嫌気性バクテリアとでは住む環境が違うからです。先ほどもいいましたが、好気生バクテリアは酸素を大量に含む場所で繁殖するのですが、嫌気性バクテリアは酸素濃度の低い場所で繁殖し住み着きます。
例えば底砂を厚くすると嫌気性バクテリアが増えてくるよ!ということもよく聞きますがこれは、底砂が厚いことにより、底面の底砂の中に酸素が回らない、低酸素状態の場所ができるからです。
好気性バクテリアは比較的簡単に繁殖してくれるのですが、相反する場所を好む嫌気性バクテリアをバランスよく棲みつかせるのは難しいんですね。
そのため通常は、好気性バクテリアにアンモニアを硝酸塩にしてもらったら、その硝酸塩は嫌気性バクテリアに頼るのではなく人の手による水換えによって排出するというのが一般的です。
よく水換えの時、水を1/3だけ入れ換えるというのは、硝酸塩の排出が主な目的で、すべて換水しないのはせっかく住み着いた濾過バクテリアを水槽内に残すためです。同様の理由で、濾過フィルターを洗う時はカルキ入りの水で住み着いたバクテリアを殺菌しないように、飼育水で洗ったりする必要があります。
だから水槽のリセットをした場合は、繁殖した濾過バクテリア達も捨ててしまうことになるので一から金魚の飼育環境を作り直す、水槽を立ち上げ直す、飼育水を作り直すということになるのですね。
嫌気性バクテリアは難しいやつなんです!
バクテリアが金魚とその飼育環境に与える影響
バクテリアがいない水槽と十分にバクテリアが繁殖して棲みついている水槽で金魚を飼育して比べてみると歴然とした違いがでます。
バクテリアが十分に繁殖していない水槽は、金魚の排泄物からでるアンモニアや餌の残りから発生する物質など有害な物質がなかなか分解されず水中にどんどん蓄積されていきます。そうなると毎日水換えでもしない限り健康に金魚を長期間飼育し続けるのはおそらく不可能でしょう。
一方、バクテリアが十分に繁殖した水槽は、適正範囲内の生体の数であればアンモニアなどを毎日気にする必要もないでしょう。理由はもちろん生物濾過で濾過バクテリアが働いてくれるからですね。
ということで見た目が同じような環境の水槽でもバクテリアのいる水槽といない水槽では格段に水質の悪化速度が違ってくるんです。そんなわけで金魚飼育にバクテリアはなくてはならない存在なんですね。
もはや、金魚を飼育する際に水槽を濾過してくる濾過バクテリアは金魚とは切っても切れない関係ともいえます。
水槽が立ち上げる、水を作るという言葉の意味
こちらはこの言葉を使用する人で個人差はあるとは思いますが、簡単に言うと、水槽を立ち上げるというのは先に説明したような「バクテリアの力で生物濾過が働いている環境を作る」という意味で使われていることが多いと思います。
飼育水を作る、水を作るというのも、すごく簡単にいうと余計なカルキなどが抜けて「濾過バクテリアがいる状態の水を作る」(詳しく言うともっと複雑な話だと思いますが)といった感じでしょうか。
結局この「濾過バクテリアがいる状態の水」というのが金魚や生き物の住める飼育水ということになってきます。なので下のようなバクテリア付きの濾材などを最初から使用したり、生きたバクテリアを使用することで濾過バクテリアの初期の繁殖を早めることができます。
砂利を敷いて器具を配置して水槽に水を張ってもその段階では、水槽を立ち上げる準備ができたというだけで、その水槽は立ち上がっているとは言えないということなんです。
本当の意味で水槽が立ち上がった、飼育水ができたというのは、濾過器などが正常に可動し、濾過バクテリアが働きはじめ、濾過バクテリアによる生物濾過が機能して、ようやく水槽が立ち上がった、水ができたということになります。
ですから金魚や生体を導入するのはタイミングは本当は濾過バクテリアが十分に繁殖してからが好ましいんです。
みなさんも新たに金魚飼育などを始める場合は、生体を導入する日に水槽を準備するのではなく、数日前から水槽の立ち上げ準備をはじめ、生体を迎える時には水槽が立ち上がった状態を作っておくように心がけましょうね。
下記のような濾過バクテリアのついた状態で販売されている商品を使えば、最初から繁殖させる元となるバクテリアが付着してますので水槽の立ち上がりを早くする、水ができる期間が早くなると言うことができるでしょう▼
バクテリアができていても水換えはするべき。水換えの目安は?
屋外での飼育環境だと好気性バクテリアと嫌気性バクテリアが絶妙なバランスで成り立ち、蒸発した分の水を足しているだけで金魚が何十年も生きていけるということが稀にあります。ただし、ほとんどの場合はそのようにバランスがとれているということはありません。やはり水換えが必要になることが多いです。
屋内の飼育環境だと自然の力には頼れないのでさらに水換えが重要になります。ということで水換え時期の目安・タイミングについて書いておきます。
水槽の水が濁る
金魚水槽の水が濁って透明度がなくなってきている場合や、急に水の色が白く濁ってきたという場合は、濾過バクテリアが水質を維持できる範囲を越えて環境が崩壊してきています。前述したように一部の場合を除いて、いくら濾過しているといっても水換えも濾過器のメンテナンスもせず放っておけば水が濁ってくるのは当たり前です。そうなったらすぐに(できれば濁ってくる前に定期的に)水換えを行いましょう。
水が臭くなってきた・・・
金魚の飼育水が臭くなってきた場合は要注意です。エアレーションをしてなかったり、水中に酸素が足りない状態になると好気性バクテリアではなく嫌気性バクテリアのほうが増殖してきます。嫌気性バクテリアが増殖するとどぶ川のような悪臭がしてきます。好気性バクテリアではなく嫌気性バクテリアが繁殖している状態は金魚には危険な状態ですので水換えを行いましょう。
金魚が病気になる、金魚に異変がでてきた
金魚が水面に向かって口をパクパクするようになったり、エアレーションをしている場合は泡の切れが悪くなったり、泡がいつまでも水面に残っている場合、糞や餌の残りが分解されずにずっと水槽内に残っているようならもう水換えをするべきです。もちろん、金魚に病気になったり、行動に異変がでた場合もです。(このタイミングでの水換えはだいぶ手遅れですが、この状態で水換えをしないとさらに深刻な状態になります)
金魚水槽にバクテリアを発生させるにはどうすればいい?
それでは、水槽の立ち上げ時に、具体的にバクテリアを繁殖させるにはどうすればいいのでしょうか。濾過バクテリアは通常、あまり考えずとも空気中を漂っているものや、低床などに付着しているものが自然と水槽内に入り込み水中で繁殖します。その時バクテリアは生体が排出するアンモニアを餌として繁殖します。
よくエアレーションをから回ししておくという言葉がでてきますが、こちらは好気性バクテリアに必要な酸素の多い環境を作り好気性バクテリアを繁殖させるという意味があります。そしてこれもよく耳にする(耳にすることになる)と思いますが、パイロットフィッシュを水槽の立ち上げ時に泳がせておくという方法です。
パイロットフィッシュはアカヒレなどの丈夫な魚をまず一匹だけ泳がせておくのですが、この意味にはパイロットフィッシュとされている魚の排泄物から排出されるアンモニアを利用して好気性バクテリアの繁殖を促すという重要な意味をもっています。
したがって金魚水槽の立ち上げ時に、バクテリアを発生させるには、数日エアレーションをから回しした水にアンモニアを排出する元となる比較的丈夫なパイロットフィッシュ(貝などでもいいようです)を投入しておくとある程度、効率よく濾過バクテリアを水中に繁殖させておくことができます。
この工程を経ることで金魚の飼育初期の水槽の立ち上がりの速さ、水槽立ち上げ初期の水質の安定度が変わってきますのでぜひやってみてください。(上で紹介したバクテリア付きの濾材を使ったり、他にもすでに生体を飼育している飼育容器がある場合はそこから水や濾材を持ってきて使用するものいいですね)
とはいえ、最初の一週間などは特にバクテリアが安定していないことがほとんどなので、アンモニアや硝酸塩を確実に排出できるよう毎日20%程度の換水などを心がけておくとよいでしょう。
この商品は、バクテリア入りの水とバクテリアの付着した石をセットにしたもので、初心者が小さい飼育容器で金魚飼育を始めようとする水のできあがってない状態に有効ですね▼
市販のバクテリア繁殖剤・バクテリア剤などの効果について
市販のバクテリアの液(バクテリアの繁殖剤やバクテリア剤)などは、はっきりいってしまうと特別に入れなくても良いものともいえますが、入れた方が良い結果を得られる場合もあります。(特にアクアリウム初心者・金魚飼育初心者が水槽を立ち上げる場合)数日水槽の立ち上がり(濾過バクテリアの繁殖)が早くなるとの声も確実にあるからです。
ただ、バクテリアなんて自然に増えるもの、増やすもので外部からいれるバクテリアなんて入れる必要はないという意見や、そもそも市販のバクテリア液には効果のない粗悪品もあるという意見もあります。
個人的には、まったくバクテリア液や水質調整剤をまったく否定する気はありませんが水質調整剤や市販のバクテリア液などを否定する人の意見を聞いているとそれもそうだなと思うところもあります。
こういった商品はアクアリウムの初心者が使用したり、熟練者が経験と知識から裏付けされた持論をもとに使用されるものだと思います。
熟練者(アクアリウムの知識の豊富なベテランさんやプロショップの方)には言うまでもありませんが、アクアリウム初心者も自分が使用しようとしている商品の働きを少しは理解しておいた方が良いでしょう。理解せずに使用していると本当の効果が引き出せていなかったりマイナスの効果になってしまう可能性もないとは言えませんよ。
下記に紹介しているのは生きたバクテリアを投入するのに評判のアイテムたちです。初心者は迷ったらこの辺りを使用するのがおすすめです。
金魚とバクテリアの関係:まとめ
金魚とバクテリアがいかに密接に関係しているか少しはわかっていただけたでしょうか?これを理解しておけば濾過器や濾過フィルターの選び方、低床・底砂の選びの考え方の材料にもなるのではないでしょうか。それでは長くなりましたが最後まで読んでいただいた皆さまありがとうございました。少しでもこの記事が金魚飼育(熱帯魚や日本メダカ、そのほか淡水魚の飼育)のお役に立てれば幸いです。